5月の半ば、アルゼンチンは初冬である。
昼間はあったかいが朝晩は冷える。
そんな中、過去に患った副鼻腔炎の再発とともに風邪をひいて寝込んでしまった。
↓【過去記事】アルゼンチンで副鼻腔炎を発症した記事↓
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アルゼンチンでは公立の病院は無料!だけど薬はなかなかもらえない。
アルゼンチンに来て人生初めての副鼻腔炎になったんだけど、これがもうとんでもなく辛かった。 ある日から ...
薬は以前にもらったものを再度、薬局で購入し、それらを服用しつつ、ひたすら寝て体の回復を待つことにした。
心もち、山場がすぎたと思われたころ、風邪のときにお笑い番組などを見て笑うと免疫が上がって治りが早いとネットで見たのでAmazonプライムビデオで少づつ見ていた”吾輩は主婦である”というドラマを一気に見ることにした。
私は根っからの宮藤官九郎ファンなのだが、この作品だけは昼ドラということもあり見逃していたのだ。
Amazonプライムビデオのリストでこれを見つけたときは思わずガッツポーズをしてしまったほどだ。
それ以来、毎日1~2話を見続けていたのだが、無料期間中に見れるかどうか実は焦っていた。
40話もあるのである。
しかし、ここへ来てこの時間の余りっぷり。
神様が”吾輩は主婦である”を見よとおっしゃっているのであろう。
どんなストーリー?
一男一女の母であるごく一般的な家庭の主婦が家計の圧迫を機に夏目漱石に乗り移られてしまうという話。
感想
とにかく斉藤由紀の演技が光る作品である。
最初気になった、及川光博の演技も全く気にならなくなるのだから不思議だ。
こんなに夏目漱石になりきれる女優だったとは。
漱石の心の声、本田博太郎の素晴らしいナレーションと相成って、完璧な漱石であった。
恐るべし、斉藤由紀!!
見終わったあと、もう吾輩はいないのか。。。と一抹の寂しさを感じずにはいられない。
みどりには悪いが、また吾輩に戻って欲しいと願わずにはいられない。
また吾輩に会いたい。。そう思わせるほどに斉藤由紀演ずる夏目漱石が魅力的なのである。
気になる方はコチラから→吾輩は主婦である
見どころ
最初はちょっとつまんないなぁ、と思って見ていたのが回を追うごとに漱石が馴染みだして、どんどんどんどん面白くなってくるのだ。
13話 漱石がたかしのみどりへの振る舞いについての説教は世の日本人男性の多くに響くのではないだろうかと思わせる。思っていて言わないのと思っていないのとは相手にとっては同じことなのである。
22話の”しまい”ではホロリとさせられてつい泣いてしまった。いい話だった。
26話の”ゆきお”のミュージカル「つぼみの花が咲く時」は最高である。特にゆきおの奥さん(宮地雅子)の歌唱力が素晴らしい。ブラボー!!
28話のペ・ヤングンには笑わされた。
29話ではみどりの片鱗が戻り始めたりしてホロッとさせつつ、お金の話で一転、漱石の「吠えヅラかくなよっ!!」の捨てゼリフが爽快。
31話では歌舞伎の観劇がえりの千代子とやすこの掛け合いが絶妙。「洗濯屋!」「古本屋!」「ななめ向かいは惣菜屋!」などつい真似したくなる。
35話 胃潰瘍で倒れた漱石はこのまま死んでは矢名家のみんながかわいそうだと思い、みどりに戻るためにはどうすればいいのかと翻弄する。その姿が健気で可笑しいのに涙を誘う。この回で生の漱石は見納めとなり、残る5話は回想となるため切なさでたまらない。
36~39話は漱石が矢名家に残した遺書である。
漱石の小説”こころ”がこのような構成になっているらしい。
”こころ”は上中下巻から成っており、下はまるまる先生が主人公に宛てた遺書なのだ。
そんな粋な演出もさることながら、最後の5話は漱石と矢名家の温かいエピソードが詰まっており、毎回涙なくしては見れないのだ。
この感動は筆舌に尽くしがたい。
40話では漱石はお墓に戻り、完全にみどりにもどってしまう。漱石のいない一抹の寂しさを感じつつ、漱石の残した功績により矢名家のみんなが楽しく夢を追って生きていく姿に安心と勇気をもらうのである。
とてもいいドラマだった。